本文へスキップ

医療現場から育まれる明るい明日を目指して

医療版失敗学とはABOUT

−医療版失敗学に強い期待を寄せて−

 昨年5月に一般社団法人元気医療ネットワーク機構が設立され、その事業目的に強く共感しました。
 私が研究している「失敗学」を医療界にわかりやすく、導入しやすいものにアレンジして、セミナー参加者や研究会参加研究員と共同で研究・啓蒙し、普及させていきたいと考えています。

失敗学とは

 「失敗学」は、福島原子力発電所事故調査委員会委員長に就任された、東京大学名誉教授の畑村洋太郎先生が提唱された考え方です。私は畑村洋太郎先生の研究室を卒業し、先生のもとで「失敗学」を学んできました。そこで学んだ「失敗学」はいかなる産業、分野にも応用可能な「未然防止」ツールであり、「人財育成」ツールでもあります。

 やってしまった失敗は未来のために有効活用しなければなりません。「失敗に学ぶ」と書いて「失敗学」であり、難しい学問ではありません。ところが失敗に学ぶためには、その考え方や方法が必要で、それを知らないと同じ失敗を何度でも繰り返してしまいます。その考え方や方法を伝授し、役に立つ新しい知識を生み出していくのが失敗学なのです。


医療界の現状

 医療安全は、リスク委員会、医療安全管理者だけで実現できるものではありません。医療従事者ひとりひとりが自覚しながら医療機関全体で取り組まなければならない課題です。

 しかし、医療従事者各個人が失敗に学ぶ方法を知らないため、未来に役に立つインシデントレポートを書けません。さらに、リスク委員会や医療安全管理者といった統括部門も、そのレポートをどうやって活用すればいいかを知らないため、データ分析と称しグラフ化したものを半期に一度報告しているに過ぎません。

 その活動は、厚生労働省に報告することが目的なのでしょうか?
 「個人厳重注意」や「点滴の際は・・すること」という対策でいいのでしょうか?
 「多忙だから」と潜在意識の中ではあきらめていませんか?
 「マニュアル化したから安心」だと思っていませんか?

 個人レベルのミスではなくてシステムエラーではないでしょうか? 点滴だけではなくて他の事例にも当てはまる話ではないでしょうか? 産業界は多忙の中で100万分の1レベルの失敗確率で優れた品質を実現していることを知っていますか? マニュアル化は思考停止を招くことを知っていますか?

 このように、真の原因解明や、他事例への水平展開の試みもなく、ただ単にマニュアル化したり、今回起こった事例を報告したりすることが目的なってしまっているように見えます。

 その結果、毎回の報告では産業界からみれば信じられないほど多くのインシデントやアクシデントが報告され続けています。その質と量は改善されず多くの経営者および院長は変化がないことで安心しているように見えます。その安心は本物なのでしょうか?

 医療分野は、命にかかわる多くのリスクと背中合わせの分野です。医療事故が発生すれば、何よりも患者さんやそのご家族が不幸になり、また医療機関としてもその解決のために多くの時間と労力が注ぎ込まれ、多額の保証金を支払うことになります。その結果、経営に大きな打撃を与えてしまい、患者さんも医療機関も不幸になってしまいます。


今こそ「失敗学」を医療界へ

 医療版失敗学の目的は、医療機関のための単なるリスクヘッジではなく、患者さんと医療機関のために、真に安全と安心な医療を提供することです。高齢化社会を迎える今こそ、産業界で培った「失敗学」の知識や手法を医療界に活用するべきです。

 医療現場で発生するインシデントやアクシデントのメカニズムを解析する力をつけ、現場で働く皆様が自ら考え行動のできる自律型現場力を向上し、さらに医療安全を根本から実現できる統括部門と組織作りができると信じています。元気医療ネットワーク機構と失敗学が、安全で安心な医療社会システムを構築する、これに大きな期待を寄せています。

 2011年7月1日
東京大学大学院特任教授 濱口哲也

元気医療ネットワーク機構

〒116-0013
東京都荒川区西日暮里3-6-9
    ラヴィーナ道灌山2F

TEL 03-3823-9223




おいたっが田舎病院「野尻中央病院」